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リモートワークでメンタルを崩した私が「感情の起伏がすごかった1年半」で気づいた一番大切なこと

デジタルエージェンシーTAMで広報担当として働く渡邉由姫乃さんは、入社当初から始まったリモートワークの影響で心身に不調をきたしてしまったそう。不調までには至らなくとも、同様の悩みを感じている人は少なくないでしょう。

今回は渡邉さんに、リモートワークによって働く環境と自身の内面にどのような変化が起こり、どのように不調と向き合い克服したのか、その経験から気づいた働く上で大切なことについて、HR担当の茶園舞穂さんとともにお話を聞きました。

「感情の起伏がすごかった」1年半年間のこと

渡邉:私、2022年5月に入社して、今1年半年くらい経つんですけど、その間、緩やかに落ち続けていたというか、感情の起伏がすごかったなって。

入社して3カ月くらい経ったころに舞穂さん(茶園さん)が入社してきて、それからは舞穂さんや他の人の支えもあって気持ちを保ちつつ、それでも下がりつつ。一年経って「今まで蓄積してきた水がコップから溢れた」みたいな。

TAM PR(広報)渡邉由姫乃
大学卒業後、就職をせず、オーストラリアへ留学。コロナ禍で帰国し、2021年に人材紹介会社に入社。新規営業職/求職者向けDX企業情報のインターネット配信の司会などを経験。元々就きたかった広報職に挑戦できるチャンスだと思い、2022年5月にTAMに入社

茶園:私が入社してまもないころ、ゆっち(渡邉さん)が進行する週に一度の広報ミーティングに同席することがあって。「今度、SNSでこんな投稿をしようと思うんですが」みたいなリモート会議なんですが、ゆっちがベテランの人たちになんだか気を遣っているというか。何も悪いことはしてないのに、無駄に「すみません」って言っていて。

渡邉:自分から出した提案に対してアドバイスをもらえる場だと認識しつつも、自分の仕事の「良し悪し」を判断されているように感じることがあって、正直憂鬱なミーティングでした。

茶園:ベテランの人たちも、別にダメ出しをするとか、怒っているわけでももちろんないんだけど、側から見ていると「無表情」「無反応」に見えるっていうか(苦笑)

渡邉:あれはオンラインだから仕方がないんですかね・・・?だけど、なんだかそのうちに、「私はできないやつなんだ(ズーン)」みたいになっちゃって。

舞穂さんが入社後初めて同席してくれたミーティングが終わった後、私から「なんかすみません、あんな空気で」みたいに言ったんです。もちろん、「ベテランの人たちが悪い」なんて思ってなくって。「やっぱり、出会ってからずっとリモートで、あまりリアルで会ったことがなくってお互いの雰囲気が掴めない中で、仕事の判断をするだけのコミュニケーションってハードルが高いのかな」って。

それで、「(入社まもない)舞穂さんにあんな空気見せちゃったみたいな」と思っていたら、舞穂さんは意外とどっしりと落ち着いていて、尊敬しちゃいました。いつしか仕事でなにかあったら、「なんかもう無理〜(泣)」って、舞穂さんに頼るようになってましたね(苦笑)

今思うと、(舞穂さんとは)接触回数が多かったなと。同じ東京オフィスで、席が隣で。だけど、ミーティングを一緒にやっていたベテランの人たちは基本、関西の方にいて、会うことが滅多になかった。

茶園:ゆっちも入社してまもないころ、「小さなことでもなんでも聞いてくださいね!」って、私に話しかけてくれていたんですよ。

渡邉:お互いに「ひとり広報」「ひとりHR」として情報交換したかったし、単純に入ってきてくれたのが嬉しかった。なにより、自分がひとりポジションで孤独や大変だなと思ったことを、舞穂さんには少しでも軽減してもらいたいなと思っていました。

職種やひとりポジションというのもあり、会社やメンバーのことを把握することが必要で、お互い連携したほうがいいなと思って。それで、「よかったら出社日も合わせますか?」と、毎週火曜日と金曜日は一緒に出社するようにして。だから、最初は仕事がきっかけだったんです。

それからはもっとコンスタントに、普段「あっ」って思ったことをシェアするために、月曜日の朝イチに雑談する時間として、「おはようミーティング」を始めたり。

茶園:「おはようチャンネル」っていうのをSlackで設けて、タスクに関することもそうだし、今の気分やその理由なんかももっとこまめにシェアしてるよね。

渡邉:よく覚えているのは、社内のSlackで「ハドル」っていう機能があって、あれって声のコミュニケーションじゃないですか。

私、普段「つらいな」って思っても、あまり深刻な感じにしないんです。なのに、ハドルで舞穂さんが、「今日なんか声が元気がない感じがする」って。

たしかに、そのころ元気ではなくって。舞穂さんにも「あんまり仕事にやる気が出ないのかな」くらいには気づかれるかもな、とは思っていたんですけど。

それからつらつらと話し始めて、「もうやだ、無理。絶対転職する」とかなって、「初めて泣いたぜ、しかもハドルで」って感じでした(苦笑)。「(自分を)見てくれているんだな」って、そのときに優しさを感じたんですよね。

それまでリモートで、上司に「元気ないね」なんて言われたことがなくって。「仕事楽しいですか?」「最近どうですか?困っていることありますか?」とかならあったんですけど。

茶園:「仕事楽しいですか?」って人に聞くってことはたぶん、「仕事を楽しめている=良いこと」っていう前提が、その人の中にはあるじゃないですか。だけど、仕事を楽しめるようになるって時間がかかることだよね。

渡邉:あのころの私は「仕事楽しいですか?」って聞かれたら、「あれ、今私詰められてる?」って受け取ってしまうくらいには、今思えば、気分が落ちていて。やりたい仕事にチャレンジさせてもらっていることには感謝していたけど、やっぱり環境に関しては辛かったんですよね。

茶園:私もゆっちがハドルで泣いたのは覚えてるよ。ちょうどあのころ、社内のいろんなことがゆっちに集まっていた気がしたな。

渡邉:振られる仕事が自分の仕事かどうかの判断もできなくて、「断る」っていう選択肢が自分の中ではなかったし、それを気軽に相談できる人もいなかったから。

茶園:「ゆっちは優しいから抱え込みやすい。なんでも自分で解決しようと思わなくていいんじゃない?」って、私はそのとき話した気がする。

渡邉:「それに、みんな悪い人じゃないんだから、一緒にご飯とか行って、お互いが近くなれば大丈夫じゃない?」って、舞穂さんは言ってくれたんですけど、あのときの私は、「ランチに誘って、自分のダメ出しの会になったら怖いから」って逃げた(苦笑)

私も、みんな悪い人じゃないっていうのはもちろん分かっていて、「私がちゃんと広報として機能するように、なにも分かっていない私に時間やアドバイスをくれて、本当にありがたい」くらいに普段から思ってたんですけど、気軽にランチに誘うとか、おそれ多く感じていました。

茶園:だけど、(代表の)爲廣さんとは、そのちょっと前に打ち解けた瞬間があったんだよね?

渡邉:広報が代表直下の部署なんですけど、年に1回の振り返りのための1on1ミーティングで、「ありがとう。(渡邉さんは)成長したと思うよ」って言われて。

「え、そんなこと思ってたんですか? そういうの、もっとほしいです。それがあったら、私もっと頑張れたのに」って言ったら、「アホ!そんなんよう言わんわ」。「いや、でも私はもっとほしいです。全然伝わらないです!言って!」ってなって。

茶園:その1on1の後、「爲廣さんに言うたりました」って、私に報告してくれたよね(笑)

渡邉:そうそう(笑)それからは爲廣さんには「あのとき怖かったですよ〜」とか、ちょっと気まずいこともおちゃらけながら言えるようになって。

茶園:その後、爲廣さんとゆっちと私の3人で焼肉に行ったこともあったよね。そのときにも、「2人とも頑張ってると思う。実はいつも感謝してるんですよ」って言ってくれたよね。

渡邉:それは酔っ払っていたからですよ(笑)

それでも社長に泣き散らした、理由は無関心?

茶園:だけど、そのちょっとあとかな、ゆっちが「最近、ずっと頭が痛い。胃も違和感ある」って言い出して。「たしかになんか元気ないね」って思ったことがあって。

渡邉:「まあ、大丈夫か」って言っていたんですけど、舞穂さんが「でも、慢性的な感じがするから、一回病院に行ったほうがいいんじゃない?行きなよ」って。それで、胃カメラで検査したら、「ストレスによる逆流性食道炎です」って言われて。

茶園:それで、爲廣さんとまた話したんだよね。

渡邉:爲廣さんには「もうなんでも言ってしまえ!」みたいな感じだったから、1on1ミーティングで「もう無理です」って泣き散らしました(苦笑)
「もう大丈夫かな」って何度か思えたんだけど、仕事は相変わらず大変で、それにあんまり関係が構築できていない人たちとリモートでやりとりするのは、やっぱり辛く感じてしまって。

「私は『なんでもやります』ってスタンスだけど、右も左も分からないまま、レクチャーも仕組みもないのにこんなに言われても、できるわけじゃないですか!」「『渡邉が頭が悪い。できないやつ』ってことで、もういいです!」って爆発してしまって(苦笑)

茶園:それを言われた爲廣さんも、ゆっちの変化に気づききれていないところがあったのか、「リモートワークになって、社員同士、無関心になりすぎているのかもしれないですね」って話になったんだよね。

気がついた、リモートワークで一番大切なこと

渡邉:だけど、爲廣さんにぶちまける中で、「そう言う私も、もう少し自分にやれることがあったんじゃないか?」と思ったんですよね。オフィスですれ違った時に挨拶するだとか、近くに座っている人にそのときの調子を聞くだとか、そういうたわいもないことで。

「そういうのは先に入社した人がやってくれるもの」だと思わず、自分からも関係を作るためにいろいろやれていたのかな?」って。

普段あんまり接しない人と、リモートでどこまで距離を縮めていいのか、探り探りだったし、ただでさえやるべき仕事がたくさんある中で、「私と関わる時間が無駄だと思われるのでは?」と、勝手に遠慮しすぎる部分もあった。

「自分のことを理解してもらうために、私からも行動すればよかった。自分のことが伝わるように、ちゃんと自分で動けばよかったんだ」と、今なら思う。それがもしもできていたら、悩んで、体調を崩すまではいかなかったんじゃないかなって。

茶園:全員出社だったころは自然にできていたことを、リモートだと意識してやっていかないといけないんですよね。

だって、極端に「全員、強制的に出社」だと、「遠方からリモートで働かざるを得ない人はクビですか?」ってことになるし、私も「明日から毎日出社だからね」って言われたら辞めると思う(笑)

大事なのは、「リモートvs出社」っていう二項対立じゃなくって、どんな形であれ、「お互いに関係を深める意識」があるかないか、だと思うんですよ。それが、ゆっちの体験からTAMという会社が得られた反省であり、学びなのかな。

渡邉:リモートだからこそ、より「関わろう」っていう姿勢がないと、これからのハイブリッドワークだって成り立たないですよね。

茶園:人によって、オンラインでの会話が得意なのか、それともみんなで対面で集まる場が得意なのか、とかある。それでいうと、TAMには「1on1社員マッチング」だとか、カレー部みたいな部活だとか、いろんなコミュニケーションの機会があるし、みんなにもっと活用してほしいですね。

渡邉:自分が得意なコミュニケーションの仕方を、それぞれが活かしていけたらいいですよね。

自分の経験から、大切だなと思うこと、今後意識していこうと思うことがいくつかあります。

「社内で気負わずに普段から相談ができる相手がいること」「直接会って話をすること(私の場合は、そのほうがコミュニケーションしやすいから)」「社内の人との接触回数を増やすような行動や意識をしていくこと」「毎日、会社のことだけで心と時間を一杯に使わない(社外にコミュニティを作ることも大事)」「人が向けてくるネガティブワードで自分を見失わないことを意識する」

人それぞれ、解決ややりやすい方法はあると思います。いま悩んでいる人がいたら、少しでもヒントになればいいなと思います。

[取材・文] 岡徳之 [編集協力] ウルセム幸子 [撮影] 篠原豪太


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