本当に優秀な人は、会社自身も正解や解法が分からないビジョンに燃える。TAMの展望と課題をさらけ出す
多くの企業の採用ページには当然、求める人材像、業務内容、雇用条件などが記載されています。
しかし、優秀な人たちにとって、それはときに「すでにやるべきことが決まっている会社」と、退屈な印象を与えてしまうのではないか?
優秀な人たちが「本当に」求めているのは、その会社自身も正解や解法が分かっていないビジョン。そのほうが燃えるのではないだろうか……?
そうした仮説から、今回はデジタルエージェンシーTAMのチームリーダーたちに、彼らが現在抱いている展望や課題を赤裸々に語ってもらいました。
VR・メタバースの未来に賭けたい
―角谷さんの「デザインテクノロジーチーム」はどんなことに取り組んでいますか?
主にフロントエンド開発に強みを持ち、Webアプリケーションの開発を行っています。世の中的にはDX(デジタルトランスフォーメーション)などでニーズが高い分野なので、いろんなお仕事のご相談をいただいています。
今後はそうしたフロントエンド開発だけでなく、そのノウハウを活かしてより新しい体験を作るところでお客さまに貢献できたら、と考えています。
今年4月から取り組んでいるのは、「VR(仮想現実)」の研究開発です。例えば、僕自身、UnityでアプリケーションやVRChatのワールドを作ったりしているんですが、事業化できそうだという感触を得られたので、今期中に1〜2件受注して、3年後には5〜10人くらいのチームを作れたらいいな、と思ってるんです。でも、まだまだチームにノウハウが足りなくて。
―VR、面白そうですね。具体的にはどのようなものでしょうか?
今、僕がやってるのは「VRChat」など、VR上でワールドを作ってみんなで交流する仮想空間、いわゆる「メタバース」です。例えば、VR上のバーに人が集まったり、朝みんなでラジオ体操をしたり、アートの展示を見に行ったり。
うちの子どもは新幹線がロボットになる「シンカリオン」が好きなんですが、この間はVRChat上で大展覧会があって、シンカリオンのロボットが実寸大で走っていたんですよ。それってVRでしかできない体験ですよね。
VRChatでは今、ゲームやテクノロジーに強くて、新しいもの好きな、思想的な人が多く集まっていて、そういう人たちが自分たちにとって居心地のいい新しい世界を作っています。
これは、ある意味では「マイノリティ」が生きやすい世界と言える。一方で、多様性を認める世界とも言えると思っています。
そういう感覚を共有して、新しい時代ができあがっていくのを一緒に楽しんでくれるプロフェッショナルと仕事ができたらいいなと思います。
―そんな仲間が入ってきたら、一緒にやってみたいことは?
一番面白そうだなと思うのは、メタバースでイベントを開催することです。作ったワールドに人を集めて楽しんだり、交流やつながりが生まれたりしたら面白いですね。
VRって一人でやっていたら飽きるんですよ。でも人とつながった途端にずっと続いていく。人と関係性が生まれると、 もう一つの人生が始まる……みたいな感覚も生まれるんですね。
―なるほど。VRは新しいコミュニケーションの領域なんですね。
VRでは空間と身体性を手に入れることができるので、これまでのインターネット上のコミュニケーションとは、まるで変わってきます。VR空間に身を置くことで旅行感覚も味わえるし、いろんなゲームも楽しめる。
今のVRChatはオタクっぽい世界なんですが、これがもう少し一般化してきた際には、企業の社会活動などに広げることもできると思います。そういうお手伝いができたらいいなあ、と。
元々TAMはずっとデジタル上のコミュニケーションの支援をしてきたので、今のお客さまでも、VRと親和性が高いところにはアイデアを提案できると思っています。
―具体的にはどんなチームメンバーが求められていますか?
スクリプトの開発もできるUnityのエンジニア、3Dモデラー、VRイベントのプロデューサーなど、いろんな人材が必要ですが、今のところは実際にワールドを作れるクリエイターを求めています。お客さまからいろいろ相談されたときに、それに答えられる人がもっといないといけないですね。
例えば、VR上でオリジナルのイベントを開催したいとお客さまに相談された場合、オリジナルの会場を作ろうとなると、3Dモデルやスクリプトの開発などいろんなものをイチからおこす必要があるんじゃないかと思っていて。だとすると、それをいいクオリティでできる人が一人いないと結構しんどい。
まずはVRの世界観に共感してくれる人と、ぜひ話をしてみたいですね。まだまだチームにはノウハウも認知も全然足りないので、助けてくれる人とつながりたいです。
サービスをイチからデザインできる集団に
―藤原さんのチームで現在取り組まれていることは?
お客さまと一緒に、ふわっとしているビジネスの課題のうち、どこを解決しないといけないのかを考えてプロジェクトを進める、みたいなこと。最初の段階のプランニングやデザインをするプロジェクトに関わっています。
―いわゆる「上流」の仕事ですね。具体的にはどのようなオーダーがあるのでしょうか?
案件の内容や大きさはバラバラなんですが、例えば、航空会社さんによるバーチャルゲームの新規サービスのプロジェクトで、システム開発のディレクションやサービス設計のお手伝いをしたりしています。
TAMが飲食系の会社と共同出資でやっている新しいプロジェクトでは、それぞれのお店が儲かっているかをきちんと意識する「分散型オペレーション」をしながら、お客さま起点で奉仕するのに必要なサービスをつくって、飲食業界に広めたいと考えています。
今はまだ、どういったところをデジタル化するとその実現のために役立つのか、というのを解きほぐしている段階ですね。
そのうえでは、ビジネスの手前のところでお客さんの目線でしっかり取り組める人、かつビジネスサイドやUX(ユーザーエクスペリエンス)の視点でも話ができる人、開発のプランニングもできて、デジタルマーケティングも考えながらプロジェクトに臨めるエンジニア…… そういった人が求められます。
そういう人に出会ったり、増やしたりするために、これから社団法人を作ってセミナーを開いたりしながら、そうした人材が集まれる場をつくっていきたい、と思っています。
開発プランニングはできるけれど、ビジネスサイドの話はできない人とか、UXを学びたい人とか、少しずつ「軸」の違う人たちがたくさんつながれば、できる仕事はもっと増えると思いますし。
そうなれば、メンバーがそれぞれ自分の役割の中で、高い視座のもとで議論をしながら、前向きにいい空気で進むプロジェクトが増えるような気がします。
リアルとデジタルを融合し、新しい体験を
―三内さんのチームでは、どんな企業からどんな課題が与えられるのでしょうか?
例えば、病院経営をコンサルティングしている会社。そこが医師・スタッフなどの組織を良くするためのチーム診断ツールを開発しようとしており、それをユーザーにとってよりよい形にするUXデザインからお手伝いしたりしました。
すごく興味深いチーム状態の診断結果が出るんだけど、もっといろんなことが本当はできるはずなんですね。このツールにかぎらず、それぞれのWebサービスをどういうふうに発展していけたらいいかを、もっと考えられる人が入ってくれるといいなって。
―「もっといろんなことができる」というのはどういうイメージですか?
オンラインとオフラインがつながるところまでやる、とか。
例えばBtoCで言えば、電子マネー系。リアル店舗と連携して使えるようにしたり、ユーザーのもっとライフスタイル全体にも関わったり。BtoBでは、コロナ禍で飲食店がビジネスの形を変えるのに、テイクアウトメニューをアプリでサブスクで提供するサービスを作ったり、だとか。
―それをやろうと思ったときに、三内さんのチームに足りないものはなんでしょう?
「事業を自分たちで作った」という知見がとにかく一番大きいと思っているんです。ビジネスもサービス設計も含めて。一緒にお客さまとやるケースはあるけど、まだまだ数として足りていない。
サービスデザインみたいなところを引っ張っていける人。もう少し具体的に言うと、スタートアップなどの事業会社で、事業開発とかWebの新規事業や新サービス開発をいろいろ手がけた人に来てもらいたいですね。
僕らはデジタルやWebの知見は多いと思うんです。開発やデザインができる人はいっぱいいるから、そういう人たちとペアになったら、もっといろんな可能性が広がると思っています。
データをつなぎ「個客マーケティング」実現へ
―二階堂さんのチームはどんなチームですか?
私たちのチームには、有名企業のサイトやアプリをいくつも手掛けているベテランのデザイナーもいて、クリエイティブが強いんですね。システムも、フロントエンド・バックエンドともにほかのチームに負けないスキルセットを持って、クリエイティブを表現しています。
さらに今年9月からUXのチームもジョインし、20人ぐらいの組織体として動こうとしています。
今後はお客さまのサービスを上流のUXから考え、クリエイティブとデータを高度にミックスさせた施策を提供できるような組織体を目指そうとしています。
―スペシャリストが集まって、総合した力で事業開発をする、と。「こんな体験を作っていけたら」という展望はありますか?
「最高のオンライン体験」をデザインできるようになりたいと考えています。
今、受託開発をしていても、いい商品やサービスを持っていながら、UXが考えられていなかったために売上が伸びない、認知されないといったお客さまが多くいらっしゃいます。
そんなお客さまに「ジャーニーなどのUXツールを使って、顧客や課題を可視化する」「UIやビジュアルデザインで、使ってもらえる・魅力的な成果物を作る」「顧客データを活用して、数字に基づいたマーケティング分析や施策提案ができる」「フワッとした要望を、顧客と一緒に実現できる」。
これらを通じて、エンドユーザーに「最高のオンライン体験」を提供できたら幸せだと思っています。
―顧客データの活用に関しては、具体的にどのようなことを考えていますか?
例えば、取得した顧客データをつなぎ合わせて、一人の人物をしっかりと確立させて、その人に最適なマーケティングのアウトプットをする。
UXのカスタマージャーニー上のタッチポイントがあるから、「ここにはこのデータを活用して、こういうチャネルでこういう通知をしましょう」とか、「このタイミングではこの媒体でこんなコンテンツを作りましょう」とか。
データをつなぎ合わせて、コミュニケーションを描いてあげるのが本当のUXであり、本当のカスタマージャーニーだと思うので、そこはちゃんと仕組みとしてご提案できるようにしていきたいです。
それは、必ずしも革新的な新しいサービスを作る必要はなくて、既存のサービスが行き詰っている際にも、「こういうことが必要なので、このように可視化していきましょう」とか「視点を変えてこういうふうにしていきましょう」みたいなサポートができたら。
―データ分析やUXなどの人材が必要ですね。
どんどん人を増やして、最終的には10年ぐらいかけて20~30人ぐらいの組織体を5~6個作りたいです。
そこには一人ずつ社長や参謀みたいな役割が必要ですし、そういう人を育てていかないといけない。だから、エンジニアとかデザイナーとか、現場上がりでもいいので、どんどんステップアップしたいというモチベーションがある人に来てもらいたい、と思いますね。