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「リーダーは好き嫌いとは違うところでメンバーとつながれればいい」もうすぐ会社を辞める私がこれからリーダーを目指す人に伝えたいこと

クリエイティブ・テックエージェンシーTAMの経営をバックオフィスから支える総務チームのリーダー、小柴由紀子さん。

今年(2024年)4月末に退職予定の小柴さんのTAMでの10年間は、まさに「一人のビジネスパーソンがリーダーになるまでの10年間」でした。

その過程における葛藤や克服を振り返り、これからリーダー人材を目指す若手ビジネスパーソンにとって「大切なこと」を浮き彫りにします。

自由を掲げる会社を下支えする存在

ーー総務チームはどのようなお仕事をしていますか?

株式会社TAM 総務チームリーダー 小柴由紀子
1975年生まれ。大学卒業後、ワーキングホリデー、国内・海外添乗員を経て、2014年にTAMSANシンガポールに事務職として入社。2020年にTAM大阪に移籍し、総務チームで社内のなんでも屋さんとしてみんなが働きやすい環境を作るべく日々奮闘している

小柴:経理、広報、HRを除いた、本当に「社内のなんでも屋さん」です。「備品が足りない」「社内ツールが使えなくなった」「保育園の手続きに必要な就労証明書を発行してほしい」「新しい制度を導入するのでガイドラインを作りましょう」だとか。

そういうタスクが(代表の)爲廣さんから降ってくることもあれば、社員のSlackへの書き込みで気づくこともありますし、他のチームの人と飲みに行って生まれることも。それを東京と大阪のオフィスに分かれて、4名で回しています。

ーーそんな総務チームのリーダーである小柴さんは近々退職されるんですよね?

小柴:そうなんです。4月30日付で退職することになっていまして。夫がフィリピンに転勤になり、それについていく形で私も引っ越すことにしました。

TAMはリモートワークに理解のある会社で、実際にいろんな人がリモートで働いていますが、チームリーダーの仕事をフルリモートでやっていく自信が私にはなくって。それに、海外の会社でもう一度働いてみたいという思いもあったんです。

ーーTAMでのキャリアの変遷は?

小柴:先日、TAM歴10周年を迎えました。

2014年にTAMのシンガポール法人に事務職パートとして入社しました。それから経理の仕事もするようになり、2020年に日本に帰ってきたときから、大阪オフィスの経理総務チームで働くようになりました。

それから半年ぐらい経ったときに「総務チームのリーダーをやってくれないか?」と打診されまして。「ちょっと無理だと思います」と一度お断りしたんですが、もう一度誘ってもらえて。

「もしかしたら、私の性格を知っていて、リーダーの仕事が向いていると思ってくれているのかも」と前向きに捉えて、引き受けることにしました。

ーーリーダーになってみて、いかがでしたか?

小柴:当時、総務チームには、私からしたら総務歴で大先輩の人たちがすでにいて、そこにリーダーとして入るとなったときは、「ちょっとどうしたものかな・・・」と困惑しました(苦笑)

まずは自分の業務を覚えて、ある程度落ち着いてきたら、今度は先輩たちがやっている仕事について教えてもらって。そうやってチームの仕事の全体像がつかめてくると、「こうしたほうがいいんじゃないか?」みたいなアイデアが出てくるんですね。

ただ、相手は大先輩。当然、私よりも総務の仕事ができるので、やっぱりちょっと遠慮しちゃって。「質問していいのか」「お仕事の邪魔になっちゃったらな」だとか(苦笑)

ーーそれは遠慮しますね。

小柴:Slackでのやりとりにしても、チャットだと、「相手がどういう感じで言っているのか」という温度感が分からないので、実は相手はなんとも思っていない言葉でも、冷たく感じてしまって落ち込む、みたいな。

Slackは、チャットに書き込まれた言葉に、その人の温度感が分かるように色を付けてほしいくらいです(笑)

あと、TAMって「自由」をモットーにしている会社で、だからこそ、「ルール」が整備されてないところがあるというか、自由を掲げる会社の総務ってすごく大変なんです(笑)。

だから、長年の経験と専門的なスキルがある人が、きっちり役割分担して仕事を回していくのもいいんですけど、もっと相談とか、そういうことがしやすい「心理的安全性」の高い働きやすいチームにしたかったというのはありました。

あっ、この「総務は結構大変なんだぞ」というのは、この記事はTAMの社内の人たちも読むと思うので、ぜひ入れ込んでおいてくださいね(笑)

「こいつだけ熱くなっちゃって」リーダーの孤独

ーー心理的安全性の高い総務チームにするためにどうしましたか?

小柴:最近でも続いている施策としては、「ドーナツ」というアプリがありまして。チームメンバーの生年月日や入社日を登録しておくと、Slackに自動的にお祝いのメッセージが書き込まれるんです。そうすると、「おめでとう」「いつもありがとう」だとか、コミュニケーションが生まれるきっかけになるのでいいですね。

また、週に一回、隣の経理チームと一緒に「雑談会」をオンラインでやっています。Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って数名ずつに分かれて、15分雑談する時間を取っていたりだとか。

総務チームだけでも、週に2回、朝イチに「おはよう会」というこれも雑談する場を設けています。「先週末どこ行ってたの?」だとか、本当に他愛もない会話なんですけど。あとは、Notionでメンバー間の「ナレッジ共有」も行っていますね。

ーーそれらの効果をどこで実感していますか?

小柴:そうやって雑談を繰り返していくと、やっぱり実際に話しやすくなりますよね。

普段黙々と仕事をしている人には、「大した用事でもないのに話しかけるのはちょっと・・・」と感じて、遠慮してしまいがちなんですが、雑談会やおはよう会は「話していい場所」なので。

「最近どうなの?」みたいな会話から、相手の人となりを知ると、「この人はこういう人だから、Slackでちょっときついと感じるメッセージをもらったけど、別に他意はないんだろうな」と思えて、コミュニケーションのハードルが下がっていくのを感じますね。

ーーチームを変えていく過程でリーダーとして大変だったことは?

小柴:私、結構しんどかったことは忘れるんですよ(笑)。いや、だけど、しんどかったですね。

やっぱりなんでも「相性」ってあると思うんですね。「この人はまかせてしまったほうが責任を感じてやる気を出して頑張ってくれる人だ」とか、「この人はきちんと詳細まで説明したうえでお願いしないといけないな」とか。

そういうのが分かって、心が通じ合うとラクになってくると思うんですけど、やっぱりその人と出会ってから数カ月はかかるじゃないですか。

あとは、みんなは別になんとも思っていないのに、「こいつだけ熱くなっちゃって」みたいに思われても恥ずかしいし、「自分だけがそうしたいんじゃないか」と不安になったりだとか。

私は、社長でもなんでもないから、名言みたいなことを堂々とみんなの前で言うのは違うし、だから最初は「コミュニケーションを大切にしていきましょう」だとか、小出しにしたり、ぼやかした感じで進めたりしていたんですけど。

だけど、お互いに信頼し合える仲になってくると、私も言わなきゃいけないことは言えるようになるし、メンバーもそれについて率直な意見を言ってくれるようになる。「リーダーとして信頼されているな」って思えた瞬間が、どこかであったんだと思いますね。

「リーダーは好き嫌いとは違うところでつながれればいい」

ーー「リーダーとして信頼されているな」という瞬間をどうして迎えられたんですか?

小柴:やっぱり、人に嫌われたくないじゃないですか。好かれていたいですよね、できれば。だけど、「リーダー」という立場ではそれは叶わないんだなっていうのが、ある時点でちょっと分かってしまって。

嫌なことも言わなきゃいけないし、それで嫌われるんだったらそれまでのリーダーだったんだなってことなんですけど。嫌われるのを怖れずに言うしかないんだなって分かったときに、「もうしゃあないな」って。

「好き嫌いだったら嫌いかもしれないけど、リーダーとしては受け入れられる」「別にこの人大好きってわけじゃないけれど、でもリーダーとしては一目置いている」みたいなことはあると思うんです。

私も過去の上司を思い出してみると、「腹立つんだけど、いやもうほんま嫌いやわって思うけど、でもやっぱりこの人すごいし」っていう。だから、リーダーは好き嫌いとはまた違うところでメンバーとつながっていられればいいのかなって。

ーーどうしてそう思えるようになったんですか?

小柴:私の中で大きかったのは、ご本人がどう思っているかは分からないんですけど、ある大先輩の方がいて、彼女は私より総務のお仕事をずっとやってきたから、私はまったく歯が立たないわけですよ。

なのに、総務のことをなにも知らない私なんかが急にリーダーになっちゃったんです。そして、「今日からこのチームをマネジメントします」みたいなことを言うわけじゃないですか。それは彼女にとっても、いろんな葛藤があったと思うんですよ。

それで、私はしばらく気が引けた感じで彼女とやりとりしていたんですけど、なにかのときに「これはもう言わなきゃいけないな」っていうことが、どうしてもあったんですよね。言わなくて済むんだったら、スルーしたかったんですけど。

そして、言わなきゃいけなかったから言ったら、「いや、でもこうじゃないですか」みたいな、ちょっとした言い合いっていうと言葉があれですけど、議論みたいな感じになっちゃって・・・。

でも最後、「私がリーダーなので、申し訳ないですけど、やっぱり私の考えでやらせてもらいます」みたいに言ったら、意外と聞いてもらえたんですよ。だから、私の心配しすぎだったんですけど。

彼女は本当に真剣に話をしてくれたし、だからちゃんと向き合ってくれたんだなって。それでちょっと安心したんですかね。「言ってもいいんだ」「リーダーとしてちょっとは受け入れてもらえたのかな」って思えるようになったんです。

当時のことを思い出したら、また泣けてきました。ありがたかったです(泣)

それからは気がラクになって、メンバーとの接し方が変わりましたね。リーダーという肩書きがあるからといって、別に聖人ではない。普通のいち人間。だから、かっこつけたりせずに、自分でできないことがあれば、それを言ってさらけ出してしまう。

そうすると、「仕方ないな。困っているし、助けてやるか」みたいな、メンバーが手を差し伸べて手伝ってくれるような関係や感覚で仕事をしています。

リーダーは上下関係ではなく、役割

ーーこれからリーダーを目指す人にアドバイスをお願いします。

小柴:自分がリーダーになるまでは、リーダーとメンバーの間には上下関係がきちんとあって、みたいなイメージが勝手にあったんです。リーダーが偉くて、仕事を振ってきて、下にいる私がやるみたいな。

だけど、実際は全然違う。もちろんリーダーである以上、「責任を取る」っていうのは大事な役目だと思うから、メンバーが責められるようなことがもしあったとしたら、そこは私が出ていって、「すみません」と守らなきゃいけないとは思うんですけど。

私の中では、そこには別に上も下もなくって、同列で違う仕事をしている、「私はマネジメントという役割を担当しているだけ」というか。だから、例えば、「仕事を振る」じゃなくて「お願いする」みたいな。

そういうのが本当のリーダーのあり方なんじゃないかと思うんです、というのは、リーダーになる前だったころの自分に伝えたいことでもありますね。

[取材・文] 岡徳之 [撮影] 藤山誠


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