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「YouTube請負人」“登録者2万人超え”の個人アカウントを運用、TAM松添さんに聞く秘訣と挑戦する心構え

革新的な技術やプラットフォームの出現により、デジタルマーケティングの世界は進化を続けています。特に「YouTube」はまだ歴史が浅いため、若手ビジネスパーソンにとって取り組みやすく、早くから頭角を現せる分野と言えるかもしれません。

デジタルエージェンシーTAMの広告チームに所属する松添基理さんは「企業のYouTube運用」を仕事にしています。自身でも友人と一緒にプライベートアカウントを運用し、登録者数は2万人超え。そのノウハウを転用し、社内に新しい仕事を作り出しました。

松添さんはどのようにして自分のエッジを立たせ、ユニークなポジションを築いてきたのか? YouTube運用の秘訣新しい分野に取り組む際のポイントを聞きます。

趣味で始めたYouTubeが仕事に

——松添さんはなぜ、YouTubeを始めようと思ったんですか?

大学生のころからYouTubeが身近にあって、挑戦してみたいと思っていたんです。これまで5個くらいのアカウントを作ったことがあります。最初のほうは、いわゆるYouTuberっぽく、「ペットボトルの船で川を渡れるか?」というような動画を撮っていました(笑)。一時はVtuberに挑戦し、キャラクターを作成するのに20万円くらい投資したんですが、操作が難しすぎたために断念してしまったこともあります。

——学生時代からいろいろと挑戦してたんですね。現在、プライベートでは「UMA(未確認生物)」をテーマにしたアカウントを運用されていますね。なぜこのテーマを選んだんですか?

最初からUMAに興味があったわけではありませんが、有力なアカウントがないニッチな領域なのに動画の視聴回数が多いことに気づき、勝機があると思ったんです。2021年9月からスタートして、現在(2023年4月)登録者数は2.1万人を超え、この領域における最大のアカウントになっています。

——そうした経験を活かして、現在はクライアントのYouTubeも運用されているんですね。

はい。とある企業さまから「YouTubeをやってみたい」という要望をいただいたメンバーが、僕がYouTubeをやっていることを知っててくれて、声をかけてくれました。それから僕が担当することになり、クライアント向けの仕事としてもYouTube運用に携わっています。

——どのようなアカウントを運用しているんですか?

教育業界のお客さまで、生徒さんを募集するためのアカウントを運用しています。生徒さんにとって役立つ情報や、その企業にまつわる情報を発信しているんです。アニメーションやキャラクターを取り入れて親しみやすくしたり、YouTube上で伸びている企画を分析したり、企業のイメージに合わせたコンテンツ作りをしています。企画、台本作成、撮影、編集、投稿をすべてお任せいただいています。

YouTube成功の秘訣と企業アカウントのポイント

——動画を作成するうえで意識されていることはありますか?

特に意識しているのは「台本の構成」です。伝えたいことが端的に整理されていることはもちろん、離脱されないようにすることが大切だと思っています。

コツは「常に視聴者さんに疑問を投げかける」ことです。サムネイルや冒頭で大きなクエスチョンを提示するだけではなく、その後も小さなクエスチョンと回答を繰り返し、視聴者さんを飽きさせないようにします。そのおかげで、UMAのアカウントにおける「視聴維持率」は60〜70%をキープしているんです。平均は40%と言われるので、結構頑張っているほうだと思います。

——平均の1.5倍ほど長く見られているのですね。登録者数を増やすために工夫されていることはありますか?

視聴者さんが見たいと思える動画を作ること、それと同時にプラットフォーム側がレコメンドしやすい動画を作ることが大切です。プラットフォーム側が「良い動画」と判断する指標は「サムネイルのクリック率」「視聴維持率」「チャンネル登録率」の3つ。

クリック率や視聴維持率は、視聴者さんの興味を引くような動画を作れば自然と上がりますが、「チャンネル登録率」はさらなる工夫が必要です。再生数は多いけれど、そこからの登録者数が少ない動画はレコメンドされづらいので、一時的な「バズ」を狙うのではなく、継続的に視聴さんに楽しんでいただける動画を作ることが大切なんです。

——そうした運用のコツは、仕事のアカウントにおいても当てはまりそうですね。では、クライアントのYouTubeを運用する際、特に意識していることはありますか?

どちらも大成功させようと思って取り組んでいますが、クライアントさまのアカウントのほうが「失敗しない意識」を強く持っています。自分のアカウントなら、大きくチャレンジして大きく失敗しても大丈夫です。ただ、お客さまの場合は失敗をなるべくしないようにしながら、成功させていく必要があります。

そのために大切なのは、「成功」や「失敗」の定義をすり合わせることです。どのKPIを重視するかもそうですし、「今回はこれを検証するためにやりましょう」といった、数値にならない学習の成果についても、丁寧に言語化して伝えています。

また、初めてYouTubeに取り組まれるお客さまのなかには、短期的な成果を要望される方もいます。これは、YouTubeの「中長期的にコンテンツをためることで成果を生む」という特性上、なかなか難しいことです。YouTube未経験のお客さまに対しては、そうしたプラットフォームの特性や相性の良い企画の種類について、事前に理解してからご発注いただくようにしています。

デジタルマーケティングに活きるアスリート時代の経験

——まだ馴染みのない人も多い領域だからこそ、丁寧な認識のすり合わせが大切なんですね。そもそも、松添さんはなぜ、デジタルマーケティングの仕事をしようと思ったのですか?

学生時代からやっていた陸上での学びが活かせることと、デジタルマーケティングが発展していく業界であることが大きな理由です。

大学卒業後の2年間は、社会人アスリートとして東京オリンピック出場を目指していました。怪我などが重なって出場は叶わなかったのですが、PDCAを回したり数字を分析したりするスキルを、そこで身につけたんです。また、日々成長していくことに達成感を覚えていたので、仕事でも成長実感を得たいと思っていました。

数字を分析するスキルを活かせる、かつ成長しやすい環境はどこかと考えた時に、デジタルマーケティングにたどり着いたんです。

——TAMを選んだのはなぜでしょう。

挑戦することに対して寛容な文化があると感じたからです。デジタルマーケティングをやりたいと言いながらも、まったくの未経験だった僕を、代表の爲廣(ためひろ)さんやTAMのみなさんは応援してくれました。TAMでなら、自分がやりたいことを追求しながら、お客さまに貢献できると思ったんです。新しい領域に挑戦したい人にとって、TAMはすごくいい環境だと思いますよ。

——挑戦し続けた先に、どのような未来像を描いていますか?

「最強のビジネスパーソン」になりたいと思っています。「最強」とは、業界や人に対しての影響力がある状態。さまざまな人から、目標にされるような人です。

そんなことを話していたら、先日、代表の爲廣さんから「エンタメを作るプロデューサー」になることを勧められました。デジタルマーケティングを極めようとするなかで、マーケティングやディレクションの力もつくでしょうし、「人の心を動かす」ためのエンタメ要素も鍛えることができる。それらの力を使って「多くの人を感動させるエンタメを作るプロデューサー」になるという未来像は、最強のビジネスパーソンのひとつの形だと思っています。

「自分の型」を作ることが、“最強のビジネスパーソン”の近道

——たしかに、ビジネスとエンタメを掛け合わせれば影響力も出てきそうですよね。松添さんはこれからもさまざまな挑戦をしていくと思いますが、新しいことに挑戦する際に意識していることはありますか?

よく言われていることですが、何にチャレンジするにしても「アウトプット」を出すことを意識しています。自分の中だけにアイデアをとどめて、世の中にアウトプットしなければ、PDCAを回すための反応を得られませんからね。

また、その際に大切なのは「自分なりの仮説」を持つことだと思います。仮説を持ってインプットしたほうが学習効率が高まるし、仮説を持ってアウトプットしたほうが検証すべきことも明確になります。僕もまだできていない部分が多いので、「仮説から始める」はより強く意識していきたいです。

——今後もYouTube運用の専門性を高めていくのでしょうか?

もちろん運用のスキルは高めていきたいですが、YouTubeだけの専門家になりたいわけではありません。最近、自社のTikTokアカウントの運用も始めました。TikTokのほうも、アスリート時代からプライベートで使っていたんです。また、YouTubeとTikTokの運用ノウハウをまとめたブログも始めました。このように、自分が経験から学んだことを「自分の型」としてためていくことは、最強のビジネスパーソンになるための近道だと思っています。

社内を見ていても、力がある人は自分の形に持ち込むのがうまい。ノウハウをきちんと型化して、それ自体をコンテンツにしたり、他の領域に転用したりする意識が大事だと思っています。一足飛びになれるとは思っていませんが、デジタルマーケティングの仕事に邁進するなかで、理想の姿に一歩ずつ近づけたら嬉しいです。

[取材・文] 佐藤紹史 [編集] 岡徳之 [撮影] 蔡昀儒


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